元政治学者の どこ吹く風

アカデミックな政治学者には語れない日本政治の表と裏を元政治学者が大胆に論じ、将来の日本の政局を予測する。

国民の手による政権交代へ〜民主党政権は4年続く。

総選挙による政権交代が期待されている。自民党中心の政権からの交代は、実に16年ぶり1993年以来となる。

総選挙の結果がまもなく明らかになる。間違いなく国民の手による政権交代が実現する。

16年前の政権交代は政治家の手によるものであった。1993年の総選挙では国民は動かなかった。

今から16年前の1993年7月、政治改革法案をめぐる宮沢内閣への不信任決議可決をきっかけとして自民党は分裂した。新生党、さきがけなど新党の立ち上げ、そして解散、総選挙へと政局が展開した。だがこの時、国民は動かなかった。総選挙後の政権交代を予測した者はマスコミを含め国民の中にほぼ皆無であった。選挙結果は、自民党が分裂した結果、新党が議席を獲得し自民党が減らしただけで、総選挙前と大きく代わり映えのするものではなかった。にもかかわらず、細川護熙「非自民」政権は誕生した。それは政治家の手による政権交代であった。
細川首相は、最初の記者会見において政治改革法案の年内成立を約束した。いまでいう政権公約である。マニフェスト(=政権公約)選挙が当たり前となった現在からは隔世の感があるが、これに対して当時は政治家からもマスコミからも国民の間からもかなり激しい賛否両論が渦巻いた。首相が期限を区切った政権公約を公にすることに対する賛否両論であった。
紆余曲折を経て、政治改革法は年明けに成立した。その後、国民福祉税構想の頓挫や金銭スキャンダルにより細川首相は辞任を表明する。後継には羽田孜が指名されるが、社会党が連立から離脱し、少数与党となった結果、60日余りで退陣を余儀なくされる。

次の首相指名選挙では、自民と社会党とさきがけが連立し、村山富一内閣が誕生した。これも政治家集団による政権交代劇であった。この時から現在に至るまで、連立の枠組みを変えながらも自民党を中心とする連立内閣の時代が続いている。96年1月、政権枠組みは自社さのまま、村山首相は橋本龍太郎に首相の座を禅譲する。こうして再び首相の座を自民党が握ることになった。

1996年10月総選挙は初の小選挙区選挙であった。新進党が156議席と健闘したが、国民は自社さ政権を選択した(総選挙後、社民党およびさきがけは閣外協力に転ずる)。

その後、離党議員の復党などで自民党衆議院過半数を回復する。98年5月には社民党・さきがけが連立を離脱する。だが続く7月の参院選での惨敗により橋本内閣は総辞職する。直後の自民党総裁選では小渕恵三が総裁に選出される。小渕首相が脳梗塞で倒れたあと森内閣が誕生する。

2000年6月総選挙では、森内閣の下、与党は自公保の政権枠組みを選挙前に明確にして勝利した。このとき野党は政権枠組みを最後まで明確にすることができなかった。国民は自公保政権に安定多数を与えた。


森首相の退陣後、01年7月には参院選を控えており、選挙で勝てる総裁を要望する動きが自民党内で広がる。自民党地方組織からの強い要望で、このときの総裁選において、地方予備選の実施および県連票の1票から3票への拡大が行われた。そして01年4月、地方予備選での地すべり的勝利(47都道府県中41都道府県、141票中123票)による圧勝で小泉総裁が誕生する。

小泉政権下、2003年11月総選挙では、民主党が躍進し177議席を獲得し、二大政党化状況が進んだが、自公は安定多数を確保した。国民は総選挙を通じて自公政権を選択した。2005年9月11日総選挙は、小泉政権下、郵政解散による郵政選挙であった。自民が296議席と圧勝し、国民は小泉内閣による郵政改革の継続とセットで自公政権を選択した。このとき民主党は113議席であった。

01年における小泉首相の誕生も、自民党総裁交代という形でのいわゆる「擬似的な政権交代」であった。だがそれは、当初の橋本龍太郎候補が優位という下馬票を覆したという点、さらには自民党内という制約はあれ地方票(県連票)を三倍化するという党内民主主義の拡大といううねりの中で国民的支持を意識した予備選が展開されたという点で、国民的な関心を引いた擬似政権交代であったともいえる。
小泉の総裁任期満了後、地方票においても議員票においても圧倒的多数の支持を得て安倍総裁が選出される。だが任期途中での安倍総裁の辞任、さらには福田、麻生へと総裁の交代すなわち首相の交代が相次いだ。政権の枠組みが変わらないまま、自民党総裁選によって首相の顔だけがすげ変わる「擬似的な政権交代」が続いた。

さて、まもなく2009年総選挙の開票が行われる。

今回は間違いなく4年前の郵政選挙のほぼ裏返しの結果となる。少なくとも民主党は280議席以上を獲得するだろう。民主、社民、国民新で320議席衆院の3分の2)を獲得するかどうかが一つの焦点である。
いずれにせよ政権交代という一点だけで国民は今後4年間の民主党(中心の)政権を選択することになる。
仮に鳩山政権が1年以内に崩壊するとしても、大規模な政界再編が起こらない限り、民主党政権は4年間続くことになる。

総選挙はあくまでも政権選択選挙であって首相指名選挙ではないのである。