元政治学者の どこ吹く風

アカデミックな政治学者には語れない日本政治の表と裏を元政治学者が大胆に論じ、将来の日本の政局を予測する。

安倍内閣支持率50%割れ

http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20061206-126736.html
asahi.com:朝日新聞内閣支持率
安倍内閣の支持率が低下している。共同通信社が5、6両日に実施した全国緊急電話世論調査で、安倍内閣の支持率は48・6%となり、50%を割った。朝日新聞の調べでも47%という結果が出た。


さて、この支持率の低下をどう見るか。結論から言えば、この程度の支持率低下では政権は揺らがない。ちなみに小泉内閣の支持率の最低は約33%だった。【asahi.com : ニュース特集
参考までに、海部内閣から小泉内閣までの内閣支持率の推移(1989〜2004)は次のリンクを参照。→【http://www.crs.or.jp/56912.htm
政局の状況にも左右されるが、経験的な判断からは、支持率が30%を割り込むと政権維持が厳しくなってくると言える。


ところで、安倍内閣発足に際して、僕は次のように書いておいた。「政局は来年2007年7月の参院選の結果次第だが、安倍政権に対する国民の支持が持続し、かつ、安倍政権に大きな失策が見られず、かつ、公明党並びに自民党内に離反の動きが生まれない限り、政局の大きな変動が無いまま安倍政権が持続するというのが可能性の高いシナリオだろう。」【2006-08-12 - たかはしはじめ日記 政治学者 高橋肇のメモランダム


今回の支持率低下によって「安倍政権に対する国民の支持が持続し」という第一条件がやや揺らいできたともいえる。ちなみに、第二条件の「失策」に関しては、TM(タウンミーティング)におけるやらせ発言問題や郵政反対派の自民党復党問題道路特定財源をめぐる処理の問題など失策と言えなくもないが、政権を揺るがすには至らないだろう。第三点目にあげた「離反の動き」については、公明党についてはいまのところ見えないが、自民党内の離反の動き(早期の首相退陣を迫りポスト安倍を狙う動き)も多少見られるようになってきたともいえるが、まだ様子窺いの域を出ていないといえよう。


支持率低下の背景には、さまざまな要因が挙げられているが、小泉劇場型政治に慣らされた有権者の目からすれば、小泉の次の首相としての安倍氏に対する期待値が高かった分、数ヶ月たっても安倍首相からのメッセージが見えない、スローガンも抽象的でなにをしたいのかわからないと言うのが率直なところなのではないだろうか。教育基本法改正についても、一般の国民にとっては、いったいそれで何がどう変わるのか実感が沸かないというのが本当のところだろう。また小泉以来の「改革」姿勢に勢いが無くなっているように見えることも支持率を低下させる要因として作用しているように思える。


安倍内閣の今後を占う上では、支持率が今後どうなるか(このまま低下の一途をたどるのか、それとも回復するのか)が決定的に重要である。安倍首相が退陣するパターンは、参院選で手痛い敗北を喫することで退陣に追い込まれるか、あるいは、自民党内からのポスト安倍をめぐる動きが本格化することで身動きが取れなくなるか、このどちらかしかない。自民党内からの動きに足をすくわれないためには、支持率の回復は必要条件である。安倍内閣にとって現下の課題は、支持率回復のための戦略にある。
「永田町(自民党)」内で相対的にかなり若い位置にあることにも起因する党内調整力の弱さと、同じく若さにも起因する経験値の不足がマイナスに作用し始めると崩壊への悪循環が始まらないとも限らない。世論を味方につけられるかどうかが強い首相になるうえでの決定的条件である。『美しい国』の理念だけでは世論はついてこない。