元政治学者の どこ吹く風

アカデミックな政治学者には語れない日本政治の表と裏を元政治学者が大胆に論じ、将来の日本の政局を予測する。

民主2勝で政局に変化〜愛知県知事選、北九州市長選

この記事を書いている段階ではまだ結果が出てない。が、書いてしまおう。
本日投開票の愛知県知事選と北九州市長選の結果は今後の政局を占う上で見逃せないものとなる。


実は、今朝の時点では投票率も低調だろうし愛知では現職が接戦を制するんだろうなと甘く見ていた。


まず愛知県知事選。【
投票率が午後5時現在37.21%で前回より7.72ポイント増。前回の最終投票率は38.91%、ちなみに前々回は41.92%だった。このままのペースで行けば最終投票率は45%を超えると思われる。
当日有権者数は569万人だから、投票総数は250万人を超える。問題はこの内訳である。


神田候補(現職)の得票数は、前回が150万票、前々回が135万票だった。今回は民主党が独自候補擁立へ方針転換したことによる相乗り解消で、支持基盤は真っ二つに割れている(愛知は民主地盤が強い)。仮に神田候補が前回票の60%を確保したとしても90万票。投票率の上昇分(無党派層)のうち大部分は「変化を求める投票行動」をしていると推測されるので、神田候補の得票はせいぜい100万票前後だと思われる。共産推薦候補に多く見積もって40万票が流れたとしても、民主推薦候補は110万票以上を獲得する。


最終投票率が45%を超えれば民主推薦候補の勝利も予想される。


次に北九州市長選挙。【
5期20年務めた前市長の後継をめぐり3人の新人が争う。「自民・公明推薦」、「民主・社民・国民新推薦」、「共産推薦」と愛知県知事選挙と同じ対決の構図である。
政党対決型の今回の選挙の結果を占うとすれば、過去の衆議院選挙のデータを参照するのが適切だろう。
北九州市は福岡9区と10区である。前回と前々回の衆院小選挙区の結果は次の通りである。
ちなみに2005年は、いわゆる「刺客」騒動のあった「郵政選挙」で自民党が300議席に迫る圧勝だった。


福岡9区
2005年
当121,465 三原 朝彦 自民 前  
比106,738 北橋 健治 民主 前  
  26,791 真島 省三 共産 新
2003年
当102,581 北橋 健治 民主 前
比 99,091 三原 朝彦 自民 元
  25,354 井上 真吾 共産 新


民主は、この北橋氏を今回の市長選候補とした。この数字に見るように、9区では北橋氏の地盤は強い。2005年郵政選挙でも変わらぬ地盤の強さを示している。


福岡10区
2005年
当97,748 西川 京子 自民 前  
 65,129 自見庄三郎 無 前
 60,662 城井 崇 民主 前  
 21,140 田村 貴昭 共産 新  
 10,191 小島潤一郎 社民 新 
2003年
当91,974 自見庄三郎 自民 前
比79,735 城井 崇 民主 新
 31,779 仁比 聡平 共産 新


福岡10区は2005年総選挙で、元郵政大臣郵政民営化法案に反対票を投じた自見氏は自民党公認を外され、いわゆる「刺客」として西川氏が送り込まれ当選した。自見氏は自民党を離党し現在は国民新党所属である。国民新党は今回の市長選では民主党とともに北橋氏を推薦している。この自見氏の地盤と民主党の地盤にさらに社民党の地盤が加わり、10区においても北橋氏は圧倒的に有利である。


午後6時現在の投票率は前回を10ポイント以上上回っているが、北九州市長選挙での北橋氏の優位は揺るぎないだろう。



ある記事によれば、「1月21日に投開票された山梨、愛媛、宮崎の3知事選挙は、いずれも立候補者を擁立できなかった民主党だが、2月4日投開票の愛知県知事・北九州市長選挙は候補者を推薦。これにより、愛知では1975年以来32年ぶりに、北九州では約40年ぶりに、本格的な与野党対決型選挙となり、ともに「自公」、「民主・社民・国民新」、「共産」の3陣営が激突する選挙となった」とあるが、民主党小沢代表はプレ統一地方選最後の愛知県知事選と北九州市長選に照準をあてていたと推測できる。【


今回の選挙は、対決型になったことで有権者の投票に弾みがついたと言える。とくに、国政レベルでの与野党対決と同じ構図となった場合の首長選挙は、現政権に対する評価が問われやすい。
この結果を受けて、政局は民主に徐々に有利な形で進む可能性が高まるだろう。現在の柳沢厚生大臣罷免要求と国会での審議拒否(欠席戦術)、さらには賛否が分かれる民主党CMの効果についても、今回の選挙結果は、国民全体の意識に微妙な変化を引き起こしそうである。


4月の統一地方選、7月の参院選に与える影響は予想以上に大きくなるかもしれない。


4月8日投開票の統一選の知事選は、北海道、岩手、東京、神奈川、福井、三重、奈良、鳥取、島根、徳島、福岡、佐賀、大分の13都道県の予定。

参考記事
産経ニュース


※この記事は2/4午後8:00にupしました。
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0517.pdf