元政治学者の どこ吹く風

アカデミックな政治学者には語れない日本政治の表と裏を元政治学者が大胆に論じ、将来の日本の政局を予測する。

「解散権は俺にある?」ならば「政権選択権は誰にある?」

麻生太郎氏本人が言ったかどうかは知らないが、こんな報道があった。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/183765/
麻生首相は2日午前、参院での代表質問で、経済対策を盛り込んだ2008年度補正予算案に引き続き、消費者庁設置法案や新テロ対策特別措置法の延長法案の成立に強い意欲を示した。次期衆院選については「解散という政局より、景気対策など政策の実現を優先させたい」と明言、「11月2日投開票」の方向だった衆院選日程を先送りする可能性を示唆した。
 質問に立った民主党輿石東参院議員会長が、速やかな衆院解散を要請したのに答えた。
 また、1日には共産党を除く与野党国対委員長会談が開かれ、与党側が、衆参各2日の審議で補正予算案の採決に応じる代わりに速やかに解散し11月9日に衆院選を行うとの野党提案を拒否。民主党山岡賢次国対委員長は「提案はご破算だ。徹底的に審議しよう」と通告した。麻生首相の決意と、野党の徹底抗戦が確定的となったことで、与党内では「11月2日投開票」の方向だった衆院選日程の先送りが濃厚との見方がいよいよ強まった。

麻生氏が、解散総選挙を可能な限り先延ばしにしたいという強い意欲を持っていることは、以前の日記でも早くから(麻生氏が総裁になる前から)指摘してきた。

過去の記事(解散関連〜主なもの)
(9月8日の記事)衆院解散。麻生総裁なら、来年にずれ込む???w - たかはしはじめ日記 政治学者 高橋肇のメモランダム
(9月22日の記事)麻生総理で総選挙が遠のく可能性 - たかはしはじめ日記 政治学者 高橋肇のメモランダム
(9月24日の記事)臨時国会召集で気になる民主党の対応 - たかはしはじめ日記 政治学者 高橋肇のメモランダム

9月22日の麻生総裁誕生直前には、次のように書いておいた。

麻生総理で総選挙が遠のく可能性 - たかはしはじめ日記 政治学者 高橋肇のメモランダム(9月22日の記事)より引用
 「解散よりも緊急経済対策が急務」「冒頭解散とか、早期解散とか、そんなことはありえません。緊急経済対策を仕上げてから、考える。当たり前でしょう」という麻生氏の発言は、リーマン破綻などの影響の中、説得力を増す可能性が高く、早期解散のシナリオは覆される可能性が高くなってきている。
 そもそも麻生氏自身は、早期解散よりも実績をあげてから解散したいと思っていたと思われる。ある意味そう思うのは当然であって、自分の政策と実力に自信を持っていればいるほど、総理になってすぐ解散したいとは思わないだろう。実績を上げて、支持率を上げて、それから解散したいと思うのはごく当然の感覚だと思われる。
 その際の問題は、本人の意に反して、実績も支持率も上がらない場合に、解散のタイミングを失うということだ。
 もちろん、実績と支持率が上がれば言うことはないし、麻生政権がそうならないとは言えない。野党の対応も鍵を握っている。野党が対応を誤れば、麻生政権の支持率は上昇する可能性がある。
 先日の日記にも書いたが、「自民党にとって最善の解散、総選挙の時期は、臨時国会冒頭である。」
 この考えは、いまのところ変わっていない。ただし、野党が麻生政権を追い込み支持率を低下させるという条件付きである。
(中略)
 民主党は、下手な話し合いや妥協に応ずることなく、政権交代抜きに一切の問題は解決しないとのこれまでの姿勢を堅持すべきである。すなわち、補正予算審議前の早期解散総選挙を要求すべきである。

事ここに至り、ようやくマスコミも、解散総選挙の先延ばしを現実のものとして伝え始めている。

そこで、やはり気になるのが野党の対応だ。

臨時国会召集で気になる民主党の対応 - たかはしはじめ日記 政治学者 高橋肇のメモランダム(9月24日の記事)
 僕の判断では、麻生氏は、補正予算の審議をせずに衆院解散に打って出るつもりなどこれっぽちもない。むしろ、補正予算の成立に強い意欲をもち、かつ、あくまで状況次第であるが、うまく乗り切れるのであれば、そのまま解散せずにあわよくば来年度予算成立まで政権運営を続けたいと思っているのではないか。
 なぜ、民主党補正予算の審議をせずに麻生総理が解散に打って出ると思い込んでいるのか?(中略)
 民主党が「早期の採決に協力する」ことは、むしろ総選挙の先延ばしに協力することにならないのだろうか?(中略)
 麻生総理も自民党執行部も早期解散は考えていない。(中略)
 解散総選挙は、来年度予算成立後、すなわち来年4月以降の解散でかまわないとの認識だ。
 だが、普通に考えれば、当然の認識だ。
 この認識に対抗するのは、与野党議員と国民からの早期の解散総選挙を求める圧力しかない。
 再度改めて確認しておきたい。
 第一に、解散権は麻生総理の側にある。
 第二に、総選挙を行えば自民党は大幅に議席を減らす。
 したがって、麻生政権は可能な限り総選挙を先延ばしにしようと試みるはずである。
 国民も野党も、このことを前提に行動しなければならない。

仮にいま、解散権が麻生太郎にあるとして、政権選択権はいったい誰にあるのか?


郵政選挙以来、国民は政権選択権を保障されていない。

3年前のいわゆる「郵政選挙」は、郵政民営化政権公約に掲げた小泉路線への支持であった。

小泉退陣以降、国民は政権選択の機会を与えられていない。政権公約(政府のとるべき基本的な政策路線)を選択する機会が与えられていないということだ。


小泉路線からの政策転換が明白である以上、一刻も早く、麻生氏は解散権を行使し、総選挙を行い、政権と政権公約を国民に選択させるべきだろう。



「解散権は俺にある」のだと首相が開き直るのであれば、「政権選択権は国民にある」と国民は開き直るべきだろう。

明らかな政策転換をしているにもかかわらず、総選挙の洗礼を受けていない首相が、状況を口実に、解散権を独り占めすることで、国民の政権選択権を奪っている。



P.S.アメリカでは、大統領選挙も下院議員選挙も日程どおりに行われようとしている。政局で選挙日程が左右されるというこの国の状況は果たして「いかがなものか」と思ったりもしています。

P.P.S.この記事を書き終わったところでこんなニュースが。。。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/184758/
 麻生太郎首相が同日の予算委で解散より景気対策重視の構えを重ねて示したのに対して、民主党は同日の幹部会で、平成20年度補正予算案への賛否を小沢一郎代表に一任した。同党は解散先送りの口実を首相に与えることを警戒し、補正予算案の早期採決を容認する姿勢に傾いている。しかし、解散するかどうかは首相の腹一つ。民主党の思惑通りに進むのか。

 「選挙管理内閣である麻生内閣を早期解散に導く戦略をいろいろ議論した。中身を申し上げるわけにはいかない」

 民主党鳩山由紀夫幹事長は6日夜、党本部で開かれた小沢氏らとの幹部会後、記者団にこう語った。

「いろいろ議論した」「中身」をぜひとも知りたいところだ。。。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/184758/
 鳩山氏は6日、千葉県成田市で街頭演説し「(補正予算案を)採決したら、すぐ解散して信を問うのが憲政のあるべき姿だ」と補正予算成立直後の解散を要求。幹部会後には記者団に「(民主党が予算委で)引き延ばし戦術みたいなことをやれば、相手(政府・与党)が解散をやれないとの判断に傾きつつあるので、そこに入り込むだけだ」と述べ、採決引き延ばしが解散先送りの口実に使われかねないとの警戒感を示した。
 ただ、民主党が採決で柔軟姿勢をとっても早期解散となる保証はない。民主党執行部の一人は6日夜、「いろいろやっても必ず解散に追い込める話はそんなにないんだ」とこぼした。

「いろいろやっても必ず解散に追い込める話はそんなにないんだ」。。。これが本音でしょうね。。。きっと。。
「憲政のあるべき姿」。。。(*'へ'*) ンー