元政治学者の どこ吹く風

アカデミックな政治学者には語れない日本政治の表と裏を元政治学者が大胆に論じ、将来の日本の政局を予測する。

解散できず麻生降ろしへ?

景気対策を口実に解散を先延ばしにしているにもかかわらず、麻生総理は、臨時国会の会期延長もできず、第二次補正予算も提出できずにいる。解散権を握ったままに、である。

政権選択権を行使したいと考えている有権者の側からすれば、しらけていいのかあきれていいのかわからない状況が続いている。

解散を先延ばしにしたまま、「定額給付金」以外の景気対策(?)もない中、なんのために政権を維持し続けようとしているのだろうか。

麻生総理は、もはや解散のタイミングを完全に失ったといってよいように思う。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008111500059
【ワシントン14日時事】訪米中の麻生太郎首相は14日昼(日本時間15日未明)、ワシントン市内のホテルで同行記者団に対し、衆院解散の時期について「景気対策を考えたら、予算はきちんと年度内にスタート(成立)させることがすごく大事な要素だ」と述べ、2009年度予算案の年度内成立を優先させ、来春以降に先送りすることが望ましいとの考えを示した。
(後略)

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2008111500156
【ワシントン14日時事】麻生太郎首相が、衆院解散は2009年度予算成立後の来春以降が望ましいとの考えを示したのは、金融危機が長期化の様相を呈する中で踏み切っても、勝機を見いだすのは難しいとの判断に傾いているためだ。追加経済対策の目玉と位置付けた定額給付金をめぐる調整の迷走も影響しているとみられ、首相にとり解散時期の選択肢は確実に狭まりつつある。
 首相が解散について具体的に触れたのは今回が初めて。これまでは金融危機を受けて「政局よりも政策」と言い続け、あいまいな態度を取ってきた。手の内を明かさぬまま「解散カード」を持つことで、求心力を維持するためだ。
 しかし、経済情勢は一向に上向く気配がない。定額給付金をめぐる議論の混乱が首相の指導力不足を浮き彫りにしたこともあり、与党には「仕切り直し」を求める声が広がっている。首相としては、09年度予算案の年度内成立に最優先で取り組む姿勢を打ち出すことで、解散風をいったん沈静化させ、態勢を立て直す狙いもありそうだ。
 ただ、衆院選を先送りした場合、来年6月か7月に行われる東京都議選とできるだけ離したい公明党から反発が出るのは確実だ。解散権を事実上封じられた状態が続けば、首相の求心力が一段と低下し、「麻生降ろし」の動きが顕在化することも予想される。(了)
(2008/11/15-09:24)


解散の決断ができずにどんどん先延ばしするのは勝手だが、たとえ衆院の任期満了(9月10日)まで待ったとしても、「勝機を見いだすのは難しい」状況に変化が生まれるとは思えない。

ちょうど麻生総裁の誕生日(2008年9月22日)にこんな記事を書いておいた。その後の現実の動きは残念なことに、そのとおりになりつつある。

麻生総理で総選挙が遠のく可能性 - たかはしはじめ日記 政治学者 高橋肇のメモランダム
(前略)
自分の政策と実力に自信を持っていればいるほど、総理になってすぐ解散したいとは思わないだろう。実績を上げて、支持率を上げて、それから解散したいと思うのはごく当然の感覚だと思われる。
その際の問題は、本人の意に反して、実績も支持率も上がらない場合に、解散のタイミングを失うということだ。
(後略)

どうひいき目に見ても、この先、麻生内閣の支持率が上がるようには思えない。だとすると、麻生総理は、完全に解散のタイミングを失ったことになる。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008111500232
民主党小沢一郎代表は15日、麻生太郎首相が衆院解散より2009年度予算案の年度内成立を優先させる考えを示唆したことについて「景気対策が必要なら、なぜ今国会に(08年度第2次補正予算案を)出さないのか。自分本位、自分勝手な議論をしている。首相の地位を継続させるためなのではないか」と批判した。高知市内で記者団に語った。 
 また、小沢氏は「国民生活は厳しい。国民の声を聴き、支持を得た政権が強力なリーダーシップで思い切った政治をする(必要がある)。(首相は解散を求める)国民の声に抗し切れなくなる時期が来ると思う」と語った。(了)
(2008/11/15-12:50)

だが、果たして麻生氏自らの手で解散に打って出られるのだろうか?

与党内あるいは世論から解散を求められたとしても、このような形でここまで先延ばししてしまったことに加えて、「勝機を見いだすのは難しい」状況にこの先ますます陥っていくのだと前提すれば、もはや麻生氏自らの手で解散に踏み切ることはできないように思われる。

となると、早ければ年末年始にかけて「麻生降ろし」が始まり、通常国会直前か最中に自民総裁選、与謝野総理(?)で選挙管理内閣なんて話になるんだろうか?

中曽根氏などは、勝手なプランを構想中のようである。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008111500229
中曽根康弘元首相は15日午前、都内で講演し、衆院解散の時期について「来年9月の任期満了が近づけば政府の力がなくなる。早ければ1月、遅くても4月、5月が、政府が活力を維持しながら断行できるチャンスだ」と述べ、来年1月の通常国会冒頭か来春の解散の可能性を指摘した。
 衆院選後の政局については「自民党が勝つ場合でも野党を30人も引き離すことはない。(与党で)3分の2以上の議席は持てないので、大連立をやらざるを得ない」と強調。(後略) 

だが、果たして大連立の目はあるだろうか。

現時点で、日本のデモクラシーが大連立を支持する状況にあるようには思えない。

しかも、大連立のシナリオはあくまで自民党が相対多数になることを前提としている。

また、活力を維持しながら解散できるタイミングも、すでにとうの昔に過ぎ去っているように思われる。