元政治学者の どこ吹く風

アカデミックな政治学者には語れない日本政治の表と裏を元政治学者が大胆に論じ、将来の日本の政局を予測する。

麻生退陣から選挙管理内閣へ?

まずは、麻生内閣への支持率続落のニュースから。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/200494/
 麻生太郎内閣の支持率が、9月末の政権発足当初の44・6%から約17ポイント以上も下落し、27・5%と3割を割り込んだことが1日、産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査で分かった。不支持も58・3%と6割に迫って「支持」「不支持」が逆転し、麻生首相に対する厳しい世論が感じられる結果となった。
 麻生首相民主党小沢一郎代表のどちらが首相にふさわしいかを聞いたところ、これまでの調査では首相に圧倒されていた小沢氏(32・5%)が逆転し、首相(31・5%)を1ポイント差ながら上回った。
(以下略)

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/200643/
 首相の支持率が政権発足から約2カ月で約17ポイントも急落したのは、「人柄」「指導力」「改革意欲」「言動」といった「首相の資質」をめぐる問題がクローズアップされたからだ。また、米国発の金融危機を受け、日本経済の低迷感が深刻化する中で、緊急市場安定化対策や平成20年度補正予算案を次々に打ち出したとはいうものの、約7割の回答者が景気対策を評価していないことも、支持率を押し下げた。
(以下略)

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/200733/
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/200735/


そんな中、小沢氏は「超大連立」選挙管理内閣の構想に言及しはじめた。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/200327/
 民主党小沢一郎代表が11月28日に党首討論を終えた後、「(次の政権は)超大連立だ」と麻生政権後の政界再編を念頭に、自民、公明両党との連立も視野に入れた政権構想を語っていたことが30日、分かった。
 民主党幹部によると、28日夜、小沢氏は鳩山由紀夫幹事長、新党日本田中康夫代表と都内のすし店で会食した。その席上、小沢氏は「(麻生政権は)長くはもたない。通常国会をいつ投げ出すんだろうな」と述べた。その上で、「いずれにしろ、(次の政権は)選挙管理内閣になる。全党入れた内閣になるかもしれない。超大連立だ」と語ったという。
(以下略)

ただし、小沢氏はこの報道を否定しつつ、次のように述べている。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date3&k=2008120100621
 民主党小沢一郎代表は1日午後、埼玉県熊谷市内で記者団に対し、麻生内閣について「こんな調子でそう長く持つとは誰が見ても思えない」と述べ、近く衆院解散か退陣に追い込まれるとの見方を示した。その上で、「退陣になれば、また頭だけ代えた自公政権はあり得ない。次の内閣は選挙管理内閣として選挙をすることが仕事になる」と語った。
 小沢氏は、先月28日の鳩山由紀夫幹事長らとの会合で首相退陣後に与野党参加の「超大連立」政権構想に言及した、との一部報道を否定。ただ、「(会合では)選挙管理内閣で総選挙ということであれば、各党とも意見は一致するだろう。自公がまた、たらい回しで政権を取ることはあり得ない、と言った」と説明した。 
(以下略)

この構想をめぐっては、こんな記事も出ている。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/201094/
民主党小沢一郎代表が提唱した与野党の「選挙管理内閣」構想が、与党側の動揺を誘っている。構想が現実化する可能性は低いものの、自民党分裂の「引き金」になりかねないためだ。小沢氏は今後も、麻生政権が早晩行き詰まるとみて、第2、第3の矢を放つ構えだ。
(中略)
 小沢氏も1日、埼玉県熊谷市で記者団に対し、首相が退陣した場合の政局展望について「『選挙管理内閣』となれば、各党とも衆院選(を実施すること)で意見が一致する」との見通しを示した。
 麻生政権は、定額給付金などの政策課題で二転三転したうえ、首相自らの相次ぐ失言・放言で、求心力が回復する兆しはみえない。塩崎恭久官房長官渡辺喜美元行革担当相ら自民党の中堅・若手も、20年度第2次補正予算案の今国会提出を見送った首相に対する不信感を公然と口にするなど、党内の混乱ぶりは深刻化するばかりだ。
 小沢構想には、こうした自民党の混乱を増幅させて解散風を煽(あお)る狙いがあるとされる。これにより、選挙地盤が安定せず「逆風選挙」を警戒する自民党の一部議員を政界再編に走らせ、自民党を分裂状態に追い込み、「小沢氏の究極の目的」(自民党幹部)とされる同党解体に持ち込めるとの読みがある。
 実際、公明党幹部は「小沢氏が自民党の中に手を突っ込み始めたということではないか。彼の得意な手法だ」と警戒感を隠さない。
 与党側が小沢氏の言動に神経をとがらせるのは、今回の構想に加え、小沢氏が与謝野馨経済財政担当相と囲碁を通して交友を深めているとの事情がある。「『与謝野暫定政権』をつくろうとしているのではないか」(自民党中堅)と、自民党内で過敏な反応が出るのも、小沢氏の仕掛けに対する不安感の裏返しだ。
 また、菅直人代表代行も加藤紘一山崎拓両元幹事長と接触しているうえ、前原誠司元代表も「中川秀直元幹事長とは会っている」と周辺に漏らしている。
 民主党幹部は、「自民党分裂を導き出すシナリオは深く、静かに進んでいる。衆院選前後は政局の主導権を握れる」と語る。剛腕な政治手法で知られる小沢氏が、政府・自民党をどこまで追い詰めることができるのか。「小沢戦略」は、これからが正念場だ。

ところで、総選挙後の「大連立」構想と総選挙前の「超大連立」選挙管理内閣とは性格がまったく違うので注意が必要だ。

たとえば、自民党渡辺喜美氏は次のように述べているが、総選挙後の大連立は「願望」としてはともかく現実的には可能性はきわめて薄いと思う。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date3&k=2008120100630

この構想はおそらく、以前の記事で紹介した中曽根氏の構想に近いものである。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008111500229

だが、この構想は自民党が分裂しないまま政権を維持することを前提とした「願望」の域を出ていないように思う。



さて、政局はどう動くだろうか。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/201030/
 政局の見方はほとほと難しい。「麻生vs小沢」の攻防戦は、いま、どちらに有利に展開しているのか。久々の党首会談では民主党小沢一郎代表に軍配が上がったようだが、今後の政局を俯瞰(ふかん)すると、苦しくなるのは小沢氏のほうではないかと見る。
(中略)
 メディア調査による内閣支持率は急落しているが、政党支持率では自民党民主党を上回るケースも多い。麻生首相の放言、失言など一時的な「人気ダウン」に目を奪われると、政局展望を見誤ることになりかねない。
 麻生首相が第2次補正予算案をこの臨時国会ではなく、1月早々に召集する通常国会に提出する方針を打ち出したことは何を意味するか。これによって、第2次補正予算案に続く来年度予算案、関連法案の成立まで、「60日規定による衆院再可決」を計算に入れて、来年5月連休明けごろまでの政治スケジュールが出来上がったのである。
 表面的な見方とは裏腹に政局は「麻生ペース」で進んでいるとみていい。小沢氏に、この状況をひっくり返す秘策はあるか。(客員編集委員 花岡信昭

・・・と、こんな見方もあったりする。

要するに、麻生政権も手詰まり状態だが、野党側にも解散に追い込む決定打がないという状況には変化がないということだ。

とはいえ、総選挙前の総選挙のための「超大連立」選挙管理内閣の可能性はなくはない。



衆院解散になるには、麻生総理が解散に打って出るか、内閣不信任を決議するかしかない。それができなければ、ほぼ任期満了までまっとうすることになる。

麻生総理が解散に打って出られる条件が整うことはこの先ほぼまったく考えられない。かといって、自公が圧倒的多数の議席を握っている衆院で内閣不信任が可決される条件もない。

衆院で内閣不信任が可決される条件としては、自民党から大量の造反者が出る以外にない。(公明党が離反しただけでは足りない。)

今後ますます麻生おろしが活発化したとしても、最終的に麻生総裁が辞意を表明しない限りは、麻生政権は継続する。

いずれにせよ、自民党の分裂含みの展開抜きには、「超大連立」選挙管理内閣が現実化する可能性はきわめて薄い。逆に言えば、麻生内閣に批判的な自民党の中堅議員たちが自民党の分裂も辞さない覚悟さえ持てれば可能性が出てくる。とはいえ、現時点での言動から推測する限り、党を割って出る覚悟はまったくないように見える。

ただし、自民党の分裂回避を至上命題にすることで自民党内で麻生おろしが成功すれば、麻生の次の総裁選びと連動して「超大連立」選挙管理内閣が実現する可能性も出てくる。麻生おろしから、次期自民総裁(与謝野?)=小沢を軸とする「超大連立」選挙管理内閣による総選挙実施というシナリオである。

最も早くこれが現実化するとしても、年明け通常国会序盤から1月末にかけてだろうか?

それができなければ、総選挙は早くても「桜の咲く頃」か。