元政治学者の どこ吹く風

アカデミックな政治学者には語れない日本政治の表と裏を元政治学者が大胆に論じ、将来の日本の政局を予測する。

小沢代表辞任会見を読む。

11/2の日記で僕は次のように書いていた。

「今国会を何とか乗り切らなければならない福田氏側は、新体制(大連立)論もちらつかせながら、民主党案の丸呑みを含めて対応しようとするだろう。対する小沢氏側は、以上述べた原理的問題について妥協する気は無いが、民主党が提案する恒久法の丸呑みを提示された場合どうするかが問われるだろう。」

正確な情報が無い中で書いているので、多少の事実との食い違いには目をつぶって欲しいのですが、僕のコメントのポイントは民主党が提案する恒久法の丸呑みを提示された場合どうするかが問われる」という点にあった

突然の辞任についてわけのわからない感想を言う前に、まずは小沢代表の辞任会見を国民(および民主党議員)はじっくり読むべきだ。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/97130/
以下、上記リンクからの抜粋。

「ひとつ。11月2日の党首会談において、福田総理は衆参ねじれ国会で自民、民主両党がそれぞれの重要政策を実現するために、民主党と連立政権を作りたいと要請するとともに、政策協議の最大の問題である、わが国の安全保障政策について、極めて重大な政策転換を決断された。」

ここ!。今回の大連立への決断(二大政党の党首同士の間での決断)を理解するうえで最重要です。

「そのポイントは、1、国際平和協力に関する自衛隊の海外派遣は、国連安保理、もしくは国連総会の決議によって設立、あるいは認められた国連の活動に参加することに限る。したがって特定の国の軍事作戦については、わが国は支援活動をしない。2、新テロ特措法案は、できれば通してほしいが、両党が連立し、新しい協力態勢を確立することを最優先と考えているので、連立が成立するならば、あえてこの法案の成立にこだわることはしない。福田総理は、その2点を確約された。」

要するに民主党の恒久法の提案(=小沢氏の年来の主張)の丸呑みなわけです。
だから、

「これまでのわが国の無原則な安保政策を根本から転換し、国際平和協力の原則を確立するものであるだけに、私個人は、それだけでも政策協議を開始するに値すると判断した。」

わけです。

この点の重要性の理解が民主党議員の間にも、国民の間にも完全に欠落している。
ここでは、日本と世界の安全保障のあり方および従来の憲法9条解釈の根本的転換が提起されているのである。

「私個人は、それだけでも政策協議を開始するに値すると判断した。」

(以上、http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/97130/からの引用。)


9条擁護を主張してきた共産党社民党もこの意味をまったく理解できていない。あなたたちが長年主張してきた悲願の実現なんですよ。これは。
結局、「一国平和主義」の枠内でしか発想していないので、理解できないのも当然なのですが、では、日本の革新勢力と9条擁護(護憲&憲法改悪阻止)勢力は、いったい世界の安全保障についてはどう考えているのかということが厳しく問われるのである。

以下、11/2の日記からの抜粋。

集団的自衛権の行使は、現行憲法において明確に否定されていると言うのが小沢氏の立場である。そして、この立場は、国連安保理の管轄下で実施される集団安全保障への積極的参加という立場と固く結びついている。憲法9条は、国連憲章42条と相補的な理念なのである。

この立場からすれば、テロ特措法のような集団的自衛権の無原則的拡張には、賛成できないことになる。逆に、ISAFへの参加は集団安全保障の一環であり、日本国憲法の理念からいっても原理的に積極的に参加しなければならない活動であるということになる。

そこにおいて、危険か危険でないかということは、原理的に問題にならないし、むしろ、危険かどうかで無原則的に集団的自衛権を行使することは原理的に間違っていると小沢氏は主張することになるわけである。

ということで、テロ特措法問題は政府提案の新法ではまとまらない。いまの政局の硬直状態の主要因がここにある。小沢民主党が恒久法の制定を主張するのは、集団的自衛権の行使とは原理的に異なる集団安全保障の理念に立脚した恒久法が必要だとの認識に基づいている。

福田首相は、民主党を飲み込むことで打開を図ろうとしているが、この集団的自衛権と集団安全保障との間の原理的対立が根底にある限り、小沢氏は安易な妥協をしないはずである。仮にこの問題で民主党が割れようとも妥協をしないかもしれない。

この原理的対立を焦点化すべくISAF論文が出された可能性が高いし、政局はこの原理的対立をめぐって展開していくことになる。ただし、この争点がどこまで国民(および与野党の国会議員)に理解されるかはまた別の問題である。

まとめると、今国会を何とか乗り切らなければならない福田氏側は、新体制(大連立)論もちらつかせながら、民主党案の丸呑みを含めて対応しようとするだろう。対する小沢氏側は、以上述べた原理的問題について妥協する気は無いが、民主党が提案する恒久法の丸呑みを提示された場合どうするかが問われるだろう。

できれば年内解散に追い込みたい小沢氏側だが、そのためには今国会を終結させる妥協なしには、話し合い解散という妥協も導けない。

そうなると、テロ特措法問題解決ブラス話し合い解散のための、テロ対策新法&選挙管理のための大連立内閣となるのだが、総選挙を目の前にしてこれは大いなる矛盾である。集団的自衛権と集団安全保障という日本の今後の国際貢献のあり方と憲法のあり方に直結する重大な原理的選択を迫られているのだという認識が極めて薄い現状の中では、国民の目には単なる政治劇の茶番にしか見えないだろう。

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